こんにちは。カウンセリングオフィスGardenです。
前回の記事で、誰でもが持っている「こころの境界線(バウンダリー)」についてご説明しました。今回は、子育て中の親御さんのために、子どもの心の境界線を育てるために大切なことについて、書いてみたいと思います。
子育ての中で、つい「あなたのためを思って」と口にしてしまう。そんな経験は、どなたにでもあると思います。実は、その言葉が子どもの「こころの境界線」を曖昧にしてしまうこともあります。
バウンダリー(こころの境界線)とは、「自分と他人のあいだにある見えないライン」のこと。簡単に言えば、「これは自分の気持ち」「これは相手の気持ち」と区別する力のことです。
これがしっかりしていると、人は他人の顔色に振り回されず、自分の気持ちや考えを大切にできるようになります。
バウンダリーはいつ育つ?
生まれたばかりの赤ちゃんは、自分とお母さんの区別もついていません。
そんな状態から、子どもは、自分の体や心には輪郭があって、その線の外に“お母さん”や“お父さん”といった、自分とは別の何かが存在していることを学んでいくのです。
「こころの境界線」も同様に、自分の考えや感情と、誰かの考えや感情は別のものである、ということを、周囲の大人との関わりの中から学び、それが「こころの境界線(バウンダリー)」として身についていきます。
親が子どもの気持ちを丁寧に扱い、「あなたの気持ちはあなたのもの」「お母さん(お父さん)もこう感じている」と伝えていくことで、子どもは“自分の内側を自分のものとして感じる力”を育てていきます。
子どもの気持ちを言葉にして「見える化」する
バウンダリーを育てる第一歩は、子どもの中に湧いている感情を、大人が言葉にしてあげることです。
幼い子どもは、自分の中にある“感情”に、名前があることをまだ知りません。
たとえば、われわれ大人が「悲しい」と呼んでいる、不快な感覚。
子どもはそれを「漠然とした不快感」として感じているだけで、それが何なのか、どう扱うべきなのかを知りません。
その時、そばにいる大人が、「悲しかったんだね」「くやしかったのかな」と言葉を添えてあげることで、子どもは自分の中にある感情を「これが悲しいということなんだ」と知り、それを「感じていいもの」として受け止めることができます。
逆に、「そんなことで泣かないの」「気にしないの」と感情を無視するよう言われると、
子どもは「この不快な感情は、無視すべきもの」と学び、次第に「何を感じているのかわからない」状態になってしまいます。
このように、乳幼児期に感情を言葉にしてもらう体験は、「私は私」という輪郭を形づくる大切な学びです。
「親の気持ち」と「子どもの気持ち」を分けよう
親ができるもう一つの大事なことは、子どもの感情や行動を“親自身の問題”と混同しないことです。
たとえば、子どもが友だちとうまくいかず落ち込んでいる時。
慌てて「なんでそんなことになったの」「ちゃんと謝りなさい」と解決を急ぐ前に、
「それはつらいね」「どうしたい?」と寄り添う姿勢を見せることで、子どもは「悲しいのは自分の感情」「どうするかを決めるのは自分」という感覚を自覚します。
これはトラブルになった時に、まず自分は何を感じているか、自分はどうしたいかを振り返り、相手に振り回されずに振る舞うことができる能力の土台となります。
「あなたのため」より「あなたを信じている」
バウンダリーを侵す典型的な言葉が、「あなたのためを思って」という言い回しです。
もちろん悪意はありませんが、これが続くと、子どもは「自分の気持ちより相手の考えを優先しなければならない」と誤って学んでしまいます。
それよりも、親が「あなたの気持ちを大切にしたい」「あなたがどうしたいかを聞かせて」と伝えることで、
子どもは「自分で選ぶ力」を信じられるようになります。
親が「支配する」より「信じる」こと。
それが、子どものバウンダリーを健やかに育てる大切なポイントです。
親子で育てる、やわらかな境界線
子どもが自分の意見を言えたとき、親が「そう思うんだね」と受け止める。
その積み重ねの中で、子どもは「自分の言葉・考え・気持ちには価値がある」「自分は大切にされている」と感じ、やがて他の人にも同じように思いやりを持てるようになります。
子どものバウンダリーは、親子の関わりの中で自然に育っていくものです。
「泣いてもいい」「怒ってもいい」「違ってもいい」。
そんな安心感の中でこそ、子どもは“自分らしさ”を守る境界線を少しずつ描いていきます。
そしてその線は、将来、他人を大切にできる優しさへとつながっていくのです。
そのためには、育てる親自身が心の境界線をきちんと身に着けていることが大切です。
もし、「自分は境界線が弱いな」と感じたら、前記事『心の境界線(バウンダリー)がもたらす成熟した関係』で、大人の方に向けたバウンダリーを身に着ける方法について解説していますので、参考にしてみてください。
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